2021.10.26(火)
キャリア理論とは、キャリア発達やキャリア選択に関するさまざまな現象を概念化し、一般化した科学的知識の体系のこと。
キャリアコンサルティングの場面では、個人差の大きい個別の問題を扱うことになるが、個別の問題について適切な対応を図っていくためには、その個別性を超えた一般的な傾向や法則性を理解しておく必要がある。
ここでは、下記の4分類のキャリア理論を紹介
まずは、①特性因子的アプローチから説明。特性因子的アプローチは、パーソンズ(1909)が提唱した古典的なアプローチであり、個人の特性と仕事の要件との適合(マッチング)によって職業選択を説明しようとするもの。これは、個人が自分の能力や適性を理解して、それに適合する職業を選択すれば、満足や成功を得ることができるという考え方に基づき、能力、適正、興味といった心理的特性を把握するアセスメント・ツールや職業理解のための職業情報が開発されてきた。キャリアコンサルタントにとってなじみのあるアプローチだが、一方で、ある特性を持った人に対して、進むべき道や適した仕事はすでに決まっているという考え方に陥りやすい点に留意する必要がある。
②パーソナリティアプローチに関して、パーソナリティ・アプローチは、個人の特性の中でも特に心理的要因に着目し、職業との結びつきを明らかにしようとするもの。ロー(Roe,A.)およびホランド(Holland,J.L.)の理論を紹介する。
ローは,マズローの欲求段階を取り入れ、、幼児期の欲求不満のあり方が将来の進路選択を方向付けると考えた。①家庭の雰囲気②親の態度③親の援助、これらが職業選択に影響を与えるとした考え方は、早期決定論と呼ばれる。
ホランド(1985)の理論は、多くの興味検査や職業分類に大きな影響を与え、現代的な価値を持つ理論であると評価されている。ホランドの「類型論的ー交互作用的理論」は以下の6つを理念として掲げている。
(1)職業選択は、パーソナリティの表現の一つである。(2)職業興味検査はパーソナリティ検査である。(3)職業的なステレオ・タイプは心理学的・社会学的に確かで重要な意味を持つ(4)同じ職業に就いている人々は似通ったパーソナリティの特性および発達史を共有している(5)同一の職業群に属する人々は似たようなパーソナリティを持つので、さまざまな状況や問題に対して同じように反応したり、それぞれ特徴的な対人関係の作り方をしたりする。(6)職業満足、職業上の安全性や業績は、個人のパーソナリティとその人の働く環境との一致度に依拠する。
ホランド下記の6角形モデルを示した。
ホランドが開発したVPI職業興味検査(Vocational Preference Inventory)は、現在に至るまでキャリア・ガイダンスやキャリア・カウンセリングにおいて広く利用されている。
2021.10.28(木)
昨日までに、キャリアの諸理論の①特性因子的アプローチ②パーソナリティ・アプローチの説明したので、今日は③意思決定論的アプローチから
③意思決定論的アプローチは、どのように選択するのかというキャリア選択の過程に焦点をあて、その解明を試みるものである。代表的なものがジェラット(Gelatt,H.B.)とクランボルツ(Krumboltz,J.D.)の理論がある。
ジェラット(1962)の連続的意思決定モデルによれば、採択された決定には、試験的決定と最終決定の2つがあり、試験的決定は最終決定が下される前に繰り返されるが、いずれも目的・目標の吟味や、情報の収集にフィードバックされるサイクルを構成する。
これは、未来は存在せず予測できないものであることを前提とし、その不確実性を積極的にとらえようとする考え方。
たぶん、みんな無意識で考えてることだったり考えてきた事を図にするとこんな感じになるんだと思う。まず、大本にあるのは目的・目標で、それについて情報収集して、深く考える。考えた結果根に頭の決定をするんだけど、決定した後それで終わるのではなく、再度情報収集したり、また目的・目標に戻ったりするんだね。
次にクランボルツ、クランボルツ(1979)は、バンデューラ(1971)の社会的学習理論を礎として、キャリア意思決定における社会的学習理論を体系化した。
バンデューラの理論を発展させたクランボルツは、自身の理論を①なぜ特定の職業を選択するのか②なぜ職業を変えるのか③いろいろな職業に対しての好みがあるのはなぜか、といったキャリア意思決定に関する質問に答えるものだとした。
この、キャリア意思決定に影響を与える要因として、①遺伝的特性と特別な能力、②環境的状況と出来事、③学習経験、④課題アプローチスキルの4つをあげた。
クランボルツは、キャリアカウンセラーがクライアントを支援するという観点に立ち、キャリア・カウンセリングにおける学習理論へと自身の理論を展開し、さらに2009年には偶発性学習理論を提唱している。
偶発性学習理論では、人の行動を,計画された状況や予想外の状況によって提供された無数の学習経験の結果であるとしている。
発達論的アプローチは、職業選択の一時点だけではなく、生涯にわたるキャリア発達について解明しようとしている点が特徴。ここでは、ギンズバーグ、スーパー、ハンセン、シュロスバーグ、サビカスの各理論を紹介。
ギンズバーグは、当初、職業選択について1.青年期を通して行われるプロセスである、2.不可逆的である、3.個人の興味・能力・価値観と仕事世界との妥協である。としたが、1972年にその理論を変更。具体的には1.職業選択は生涯にわたるプロセスで、職業生活と密接に関係する。2.青年期における決定は後のキャリアに影響を及ぼす。3.個人の希望と仕事世界における現実を適合させ満足を最適化することを目的として、仕事やキャリアに関する決定が行われる。
この理論を発展させたのがスーパー(1957)、キャリア発達を「前進する一つの課程」としてとらえ、生涯にわたって繰り返される「選択と適応の連鎖の過程」であるとしている。スーパーによれば、キャリアとはある年齢や場面におけるさまざまな役割の組み合わせとしている。
ハンセンは、スーパーの理論を発展させて、1980年代に「人生役割設計」(Life role planning)という考え方を示し、1997年には、人生や仕事を統合する枠組みとしてILP(Integrative Life Planning:統合的生涯設計)という概念を提唱した。
ILPは、人生やキャリア設計への包括的なアプローチであり、単なる適職選択の問題だけでなく、その後の生涯にわたって継続する職業生活や、家庭や地域など職業生活以外の生活領域を含めた生涯キャリア発達についての全般的なプランニングである。
ILP:統合的生涯設計は、重要な人生課題として
1.グローバルな状況を変化させるためになすべき仕事を探す
2.人生を意味ある全体像の中に織り込む
3.家庭と仕事の間を結ぶ
4.多元性と包含性を大切にする
5.個人の転機と組織の変革にともに対処する
6.精神性、人生の目的、意味を探求する
といった6つの課題を提唱している。
なんか、壮大なところと身近なところが混ざっていて面白い。
今日はこの辺で、ではまた。Chao!
今日はこの辺で、では、また。Chao!